YOSANO TEXTILE EXPERIENCE

YOSANO TEXTILE EXPERIENCE

YOSANO TEXTILE EXPERIENCE

 

与謝野に移住して2年、機織りの世界に片足をそっと入れて1年。

テキスタイル制作に機屋さんとのつながり、それは数年前に思い描いていた産地でのライフスタイルそのもの。大江山連峰や阿蘇海という自然に囲まれた暮らし。美味しいお米に野菜、地魚、ジビエ。与謝野に移住して本当によかったと毎日思う。「こんなにも面白くて可能性にあふれる場所があったなんて。知られず、知らされずにいた宝物。独り占めなんてもったいない。水先案内人になって、まずは私の手の届く人たちに知らせよう」。雪解けの頃から思い描いたプログラムを「YOSANO TEXTILE EXPERIENCE」と題して、この夏に実施した。

 


 

7月22日から23日と29日から30日の一泊二日。二回に分けて開催した「YOSANO TEXTILE EXPERIENCE」の構成は、「機屋見学」「レピア織機による参加者オリジナルのテキスタイル制作」「丹後の自然と食を満喫」の3本柱。それぞれの行程を、参加者の感想を交えて紹介したい。

 

 

第一弾に参加してくれたのは大学からの同級生 北條友美さんと前職の同僚 高宮桂子さん。峠の名店「大江山鬼そば」で腹ごしらえを済ませた後に向かったのは「創作工房 糸あそび」。山本徹さんが織り上げるのは経糸がリボンだったり、6重もの組織になっていたりと、独自の技術を用いた生地。大学でファッションを専攻していた高宮さん、珠玉のサンプルラックを前に目が輝いていく。

 

 

山本さんは家業を継ぐ前、テキスタイルデザイナーとして生地商社で働いていた経験をもつ。その頃から、あるファッションデザイナーとものづくりの仕事がしたいと考えていた。そして現在、そのデザイナーの一部の生地を手がけている。私も今回初めて知った、山本さんの物語。ヨーロッパでは、「ファッションデザイナー」と「テキスタイルデザイナー」の地位が等しいという。良質な生地がなければ、良い服はできない。そんな当たり前の認識が、日本ではあまり知られていない。実際に私もそうだった。世界のメゾンで使用されるテキスタイルに触れながら、日本の繊維産業の問題について考える、産地でしかできない経験。

 

 

次に訪れたのは「株式会社ワタマサ」。一貫生産を行うちりめんの織元。反物や半襟といった小物を企画からも行う。ここで糸から織物になるまでの流れと、丹後ちりめんについて教えていただく。いくつもの工場をまたがって、綛から撚糸、糸繰り、整経、製織、検反まで一連の流れと、職人さんの技を間近で見学。目にも止まらぬ速さのはた結び、管交換や点検をする職人さん、見上げればジャカードが何台も並び美しい絵紋を描き出して、その精緻な生地に感嘆の声がもれる。

 

 

テキスタイルが生まれる現場、その視覚的なインパクトに加えてシャトルの音、気温と湿度、専務 渡邊正輝さんの丁寧な説明…次々と情報が重ねられていく。とうとう飽和状態というところで1日目は終了。

 

 

夕食は、お隣宮津市にオープンしたイタリアン「ACETO」へ。飯尾醸造さんが手がける、お酢をたっぷり使ったお料理。前菜からメインまで全てに大満足、これボウルいっぱい食べたい!と言わしめた一品も。そしてとどめのデザート。これならバスタブ一杯いける!と全員が絶賛。

 

 

 

 

翌日はプログラム大詰め!いよいよ、オリジナルデザインの綿布づくりだ。まずは織物技能訓練センター指導員、尾関正巳さんによる織物講座。何人もの織り子さんを育ててきたお話は、とても分かりやすい。昨日見てきた機場のあれこれが、ここでつながっていく。

 

 

続いては手機を使ったコースター制作。シンプルな構造の手機で、自分の手足を使って織っていく。性格がでるのか、ふわふわのコースターとカチカチのコースターが誕生。

 

 

同時に、あらかじめ用意しておいたデータを元に、レピア織機による制作もスタート!前日までに元絵をつくり、私がこれまでに制作したサンプルから好きな組織=テクスチャーを選んで織物データに変換。そして製織スタート!。

 

 

二人とも、自分たちのイラストやデザインが目の前で生地になっていくことに大感動。手機の体験プログラムは日本各地にあって、それには「手作り感」が滲み出る。しかし力織機から出てくる布は「プロダクト」そのもの。自分のデザインが製品レベルの完成度で出来上がる体験は、そうそうない。私自身は、この感覚は3Dプリンターに通じるところがあると思っている。アプリを使って描いたデータが三次元の物体となって立ち現れるように、組織を組んだデータが即座に織れる。出来上がった布は後日加工に出すため、織機にかかった状態でフィニッシュ!実は前日まで織機調整に苦心していたので、無事に織れてほっとした。

 

 

午後は丹後オーガニックファーマーズマーケット「キコリ谷テラス」で新鮮お野菜のランチをいただいて、とまらずデザートにスコーンも注文。

 

 

 

満たされた気持ちで向かったのは、久美浜の「和久傳の森」に開館した「森の中の家 安野光雅館」。安藤忠雄設計の建物の内部は、展示室がひとつのコンパクトな空間。もう何日も丹後にいるみたい、と二人。濃密なプログラムながら、丹後の気候とホスピタリティあふれる人たちに、リラックスした時間に仕上げていただいた。

 

 


 

そして翌週の第二弾。今回の参加者は、とある旅で出会った井上佳奈さん、槙野真緒さん、高濱望さん。実はこのプログラム開催のきっかけは、今年2月に共に訪れた新潟県で与謝野での活動や生活の話をするうち、どんどん盛り上がって…「私(たち)も与謝野に行きたい!」と飛び出た一言。それならば、いまの私の立ち位置からできる最大限のプログラムを作ろうと発想。開催の呼びかけに即座に答えてくれた、機動力抜群の仲間。

 

 

まずは、天橋立「JouJou coffee and bread」でランチとコーヒータイム。再会の喜びを分かち合う。「都市部のカフェにもこんないい所はない」とみんな大喜びの美味しさで、午後からのエネルギーを注入。

 

 

最初に訪れたのは「ひらく織」メンバー高岡さんの機場「高美機業場」。株式会社ワタマサと同じく綛の状態から一貫生産を行っている。初めて見る、知る、織物の現場に、現代の機屋が抱える課題や将来像。早巻きで喋る高岡さんに食らいついていく三人。

 

 

ひととおりの工程を説明してもらったところで、たくさんの風呂敷を広げる。ユーモアとセンスあふれる図案に、高岡さんの語る冗談なのか本気なのか分からない物語が合わさって、三人のツッコミもはいって、ノリノリの雰囲気。お気に入りの風呂敷を手に集合写真。

 

 

次は「柴田織物」へ。このルポでも何度も登場している、おなじみの柴田祐史さん。映画の撮影に使われた帯や、きものサローネメンズ部門で一位をとったカモフラージュ柄着物、伝統的な縫い取りちりめん等を広げて見せていただく。

 

 

 

 

Photoshopを扱いながらのデータ製作、そのテクニックや地緯と絵緯の仕組みまで惜しげも無く教えてくれる(しかし理解が追いつかない!)。展示会への出展など販売の現場にも立つ柴田さんからは、たくさんの卸問屋を挟む和装業界の構造やそのメリット、デメリットといったお話も。機場では柴田さんのお母様がシャトル織機のお世話をしながら、開発や試作のエピソードを教えてくれた。そこかしこに並ぶ先染めの絹糸は鮮やかで美しく、それが無機質な織機とコントラストを描いている。最後は恒例の丹後ポーズで記念撮影!

 

 

織物でいっぱいの頭を休ませようと向かったのは「与謝娘酒造」。酒蔵見学と、丹後の農業とお酒作りの話に、嬉しい試飲まで。ちょうど2日前に販売が開始された微炭酸の日本酒「KAGUYA」と「snow white」を購入。海外出荷用に開発された新しい飲み口のお酒で、原料となる酒米の違いがダイレクトに旨味に出ていた。

 

 

 

ペコペコのお腹を満たしたのは、「井本鮮魚店」のお刺身盛り合わせ。いつもながら歯ごたえもプリプリの厚い切り身!盛りすぎと叫びたくなるボリュームにみんな感動。先月オープンした「産業創出交流センター」のオープンキッチンを借りて、美味しく楽しい宴を堪能。

 

翌日は、織物技能訓練センターでの講習からスタート。3人のオリジナル綿布を織りながら、手機のコースターづくりが順調に進む。機結び講座、筬通しの実演まで、尾関さんは幅広い知識と技能を教えてくれた。遠路はるばる集った参加者への気持ちが伝わってきて、とっても嬉しい。前夜にあれやこれやと悩んで選んだ組織が実際に織られる様子に、三人とも釘付け。これから洗い、糊落とし、晒しを経ると、まったく違った風合いになる。

 

 

 

午後は「カフェ蒸気船」でパスタを食べて加悦双峰公園へ。曇りがちではあったけれど加悦谷平野を見渡して、そこから一気に下って伊根の舟屋群へ。山と海がとても近い、丹後の地形をダイレクトに感じるドライブ。「向井酒造」でお土産やアイスを購入して、一足伸ばした満足感も。プログラムは、後日作品の発送をもって完了。機屋さん、尾関さん、地域の方のあたたかいフォローが最高の4日間を生み出した。

 

 

私がこのプログラムを通して得たかったこと。それは、ここから先へ浸透していく一滴の可能性だと思っている。町の秘めた技術と魅力を外へ、未来へ。水が布に滲むように、染みわたるように。私は、その泉を枯らしたくない。

 


 

最後に、参加者からのアンケートを一部抜粋して掲載。本質を捉えた言葉、びっしり書かれた熱い思いに、読むたび泣きそうになる。

 

「マスプロダクション/ファストファッションが主流となっている今、私達は何が本当に大切で何が必要かを再考しなくてはならない所に立っていると感じています。日本の風土や歴史の中で、恐らく時に困難をも乗り越えて培われてきたことが、ごく最近の大量生産や消費社会があたりまえだという価値観から脱却出来ずにいる私たち自身によって、いとも簡単に破壊されようとしている現実を、個々が危機感を持ち疑問を持つべきだという必要性を感じています。残念ながら、私達が生活の中で手に取る物、例えば衣服や食料品、そこに至るまでの経緯を目の当たりにすることは稀ですが、今回の様に何かが生み出される現場を見学することは、上記に挙げる危機感をすでに感じている人にとっても、またはその思いや考えからはほど遠いところにいる人たちにも、インパクトを与えるのではないかと思いました。」

 

 

「産地の職人さんとしてのプライドを感じました。想像以上にアナログな機械で、機械といえども手仕事に近い制作方法に感動しました。安い生地に飽きてきた人にとっては、制作工程を見ることで、こだわりを実感できるいい機会になるかなと思います。」

 

「初めて見る機場は物珍しい光景でした。原田さんのインスタグラムをよく拝見していますが、どこを見てもフォトジェニック。複雑な機械が動く音は思いのほか大きかったです。お話させていただいて、高岡さんも柴田さんも新しいことに挑戦して楽しんでいらっしゃるという印象があり、織物のことをもっと知りたくなりましたし、何か人生の節目に、こういった方々の作られるものを使いたい、身に着けたいと思いました。織物のことを全く知らない素人に惜しみなく教えてくださり、貴重なお時間をありがとうございました。」

 

「広くモノづくりとしての織物の製造過程に少し興味を持っての参加でしたが、お話を聞けば聞くほど興味を惹かれました。これまで自分が着ている服のデザインは気にしても、素材を気にかけたことはありませんでしたが、服の見方が根底から変わりそうです。」

 

 


 

YOSANO TEXTILE EXPERIENCE秋季編は2017年10月28日-29日に開催予定。

興味のある方は、下記アドレスまでご一報ください。

textile@paranomad.net

 

柴田織物

創作工房糸あそび

高美機業場

株式会社ワタマサ

 

ACETO

JouJou coffee and bread

Tango Organic Farmer’s Market キコリ谷テラス

与謝娘酒造

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