星空の着物
[vc_row css_animation=”” row_type=”row” use_row_as_full_screen_section=”no” type=”full_width” angled_section=”no” text_align=”left” background_image_as_pattern=”without_pattern”][vc_column width=”1/6″][/vc_column][vc_column width=”2/3″][image_with_text_over icon_size=”fa-lg” image=”1122″ title=”星空の着物” title_size=”24″ image_shader_hover_color=”rgba(0,0,0,0.01)”][/image_with_text_over][vc_empty_space height=”60″][vc_column_text]初夏に投稿した「HOLA! KIMONO PROJECT」。その後を綴るルポルタージュ。
薄い藤色に染められた着物は、秋雨の夜に開かれた茶会でお披露目となった。
アーティストCeciliaが生まれた日の星空が緞子(どんす)のなかに織り込まれて、時折浮かび上がっては瞬く。帯の位置を赤道と見立て、北半球を上半身に、南半球を下半身に星たちが配置された図案。所作の一つ一つに合わせて星が瞬く様子は、まるで本物の星空のよう。
古典柄の帯に鮮やかなピンクの帯揚げと紫の帯締め。アーティストの色彩感覚を取り入れたコーディネートは、不思議と派手さはなくしっくりと馴染んでいた。
サンプルで生地の質感を検討して、Ceciliaが選んだのは通常と「絵緯(えぬき)」と「地緯(じぬき)」が反転した状態のもの。一般的に、地模様の「地緯」に対して、絵柄となる「絵緯」は凸の状態になっている。つまり、絵柄が凹になっていると、それは生地の裏側を間違って表にしているのではないかと思われてしまう可能性がある。長年、ちりめんに携わってきた尾関さんからの指摘。そんなルールがあると知らない私たち。実際に、染め屋さんから表と裏を間違っていないかと確認の連絡がはいった。紋ひとつにしても、オリジナルの形の外側に丸をつけるのかどうか、その形状は普通の紋とは違うけれど問題はないか。
呉服屋さんからの確認は、次第に「普通とは違うけれど、これでいいのよね」が慣用句になっていく。一つ工程が進むたびに、職人さんからは問い合わせが入り、根気強く丁寧なやり取りが続いた。
時をさかのぼって夏。お盆があけて残暑厳しいなかでの製織作業。首にタオルを巻きながら、シャットル織機のリズムと杼箱の上下運動にも耳が慣れてきたころ…織り上がりの表面に丸いプツプツが現れた。「スネ立ち」と言われ、緯糸が小さなループを作ってしまう厄介な現象。検反のときにその部分をほぐして耳まで移動させなくてはならない。気の遠くなるトラブルで、高温多湿のときに発生しやすい。シャットルのゴムを取り替え、ライニング(管から引き出される糸の抵抗を調整するファー状態のパーツ)を張り替え、ずっと調整を試みてくれた尾関さん。今度こそと思ってスタートをかけても、すぐまたスネ立ちが現れて。刻々と変化する気温と湿度が引き起こすトラブルを前に、私はなすすべがなかった。
予想していた時間にはもちろん終わらず、連日ヒグラシが鳴く時刻まで作業が続く。仕上がり寸法はサンプルを元に割り出したけど、サンプルの数10センチと一反分で縮み率が違うかもしれない。そもそも計算を間違えているかもしれない。地緯と絵緯の指定をあべこべにしているかもしれない。毎日胃が潰れそうなプレッシャーがやってきて、ものづくりの緊張感と高揚感に浸かっていた。これから何度も味わうであろう感覚、逃げたいと思いながら開けてしまった扉。「注文を受けたものをつくる」ことに日々取り組む職人さんに頭がさがる思い。
サンプル制作、反物図面作成、データ変換、製織、精練、染め、紋入れ、お仕立て、完成、納品、そしてお披露目。達成感よりも、とにかく安堵。「仕上がる」ことは当然のことだけれど、それはすべての仕事の「結晶」だと改めて思う。そして、着物をまとったCeciliaは美しかった。
ルポルタージュ前編「HOLA! KIMONO PROJECT」
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